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2007-06-28

全てが未解決

 今月号、発売中です!

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 さて、今回見たのは『ゾディアック』です。監督はデビッド・フィンチャー、出演、ジェイク・ギレンホール、ロバート・ダウニーJr、マーク・ラファロ、アンソニー・エドワーズ。サンフランシスコで、1960年代後半に実際に起きた連続殺人事件を題材にしたデビット・フィンチャー5年振りの新作は、どこまでも誠実に、丹念に描かれた作品でした。

 ドライブ中に、一組のカップルが襲撃される。その後、新聞社に事件の犯人しか知りえない証拠が書かれた手紙と、謎の暗号文が届く。その暗号文を掲載しないと更に殺人を犯すと。そして、犯人は自らを「ゾディアック」と名乗った。新聞社に勤めていた敏腕記者ポール、風刺漫画家グレイスミスが、この事件に興味を示す。
 そんな中、タクシー強盗殺人事件が起きた。捜査を担当したのはトースキーとアームストロング。二人も、この事件をキッカケに、「ゾディアック」に関わっていく。

 現代から見てみれば、お粗末といっていい捜査に見えますが、プロファイリングもなかった当時からしてみれば、あれが限界だったのでしょう。だからこそ、方向がずれていってしまった。
 膨大な証言と証拠、もう少しで捕まえられそうなのに、直前でするりと抜けていく犯人と真実。ずるずると、関係者達は引きずられて行きます。

 キャストは通好みと言ってよく、中でもロバート・ダウニーJrがいいです。不穏な危うさを持った敏腕記者を好演。ジェイク・ギレンホールとの、のめり込んでいく二人の対比が面白かったです。一人は転落、一人は……。

 大どんでん返しも、大胆な演出もありません。真摯に、丹念に、誠実に「人間」を描いています。とはいえ、所々で「フィンチャー節」も炸裂しているのがたまりません。ぐぐぐっと惹きつけられる。あの不穏な空気を体現し続けたのは、フィンチャーの手腕でしょう。
 ちょっと上映時間が長すぎましたが……。

 映画の観客だけでなく当時の大衆は、この事件に対して、ずっと「何か」を期待していました。「何か」あるに違いない。あっと驚く真実があるはずだ。「犯人を捕まえる」以上に、「事件」そのものに熱狂していく。
 しかし事件は未解決のまま、肩透かしに終わり、大衆は冷めていきます。映画の観客もある時、気付きます。「この犯人は、自分の人生をかけてまで、探し続けるような犯人なのか?」と。
 殺人鬼をカリスマにするのは、メディアであり大衆なのです。犯人は、ただのクソ野郎です。

 冷めた瞬間、事件を捜査する関係者達が我々の眼にどう映るか。

 関係者たちは、納得できません。ずっと、きっと「何か」が手に届くだろうと信じ、走り続ける。
 この映画は、連続殺人事件に翻弄され、ついには犯人ではなく、その先にあるであろう「何か」を追い求めてしまった男達の物語です。

 事件への執念、自らの生活、引き返したいという思い、引き返せないという思い……気付いた時、「ゾディアック」は犯人の名前ではなく、事件そのものになっており、残虐非道な犯人を捕まえる為ではなく、長く思い続けていた恋人のような存在になっています。その姿は、切なさすら感じました。
 事件は未だに未解決です。何一つ、暗号文の意味も、殺人の動機も、犯人像も、何もかも藪の中。関わった男達も藪の中へ消えていきました。

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2007-06-04

アトラクションムービー

 おおお、お久し振りです! 映画は見ていて、しかも感想の下書きは書いていたのにアップするのを忘れておりました。くくう! すんません……もう時期外れなので、見たばかりの映画を。
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 『パイレーツ・オブ・カリビアン/ワールズ・エンド』です!
 監督はゴア・ヴァービンスキー。華監督よりも製作の名前の方が映画の宣伝になるのはこの人だけ、ジェリー・ブラッカイマー。
 出演はジョニー・デップ、オーランド・ブルーム、キーラ・ナイトレイ、ジェフリー・ラッシュ、ジョナサン・プライス、ビル・ナイ、チョウ・ユンファ、そして噂の“あの人”も。

 上映時間が3時間くらいあって、少々長過ぎでした。もっと、グッと濃縮させた方がいい、というのを最初に書いておいて……。

 七つの海を渡り歩く、自由に駆け巡ってきた海賊達。敵対するものだけでなく、掟や契約、呪いと闘ってきた。海で生き、海で死ぬ者達の物語。三部作の完結編は、壮絶・壮大な死闘となりました。

 『呪われた海賊たち』は一話完結でしたが、2作目の『デットマンズ・チェスト』が「起承」で、今作が「転結」。ちょっと設定や細部を忘れてしまっており、しかも伏線を矢継ぎ早に回収し、テンポよく進んでいくので、うっかりと気を抜けませんでした。あとで三部作を一気に見るのもいいかと思います。どこかの映画館でやりそうな企画ですね。

 今作はとにかく「結」に辿り着かなければいけないので、少々細部が雑でした。いや、雑というのは悪く言い過ぎかもしれません。細部が魅力的なので、あれで終わらせては勿体無いと思ったのです。
 例えば、宿敵デイヴィ・ジョーンズの過去と愛した女の話、シンガポールの海賊サオ・フェンの話。サオ・フェンなんて、特に丁寧に描けばもっと立ったキャラになったはずです。せっかくチョウ・ユンファを起用したわけだし。勿体無い存在でした。

 何より、ジャック・スパロウのシニカルな部分がたいぶ消えていました。これは『デットマンズ・チェスト』の時も思いました。その影響で、彼の「何をしてかすかわからない、でも絶対に勝つであろう」という根拠のない「万能感」が薄い。それでも、かなりぶっ飛んでいたし、ステキ過ぎたわけですけど。

 と、文句ばかり書いておりますが、退屈しない、まさに“アトラクション”みたいな映画でした。

 様々な駆け引き、そこから生じる人間ドラマ。華麗な人物相関図を組み込みながら出来上がっていく海賊vs東インド貿易会社という図式。そんな複雑な関係でありながら、子供でも楽しめるド派手な戦闘シーン。

 なにより最後の闘い直前のシーンは圧倒的です。そこから始まる怒涛のアクション。荒れた海を舞台に、二艘の船が展開しあい、大砲を打ち合い、剣での斬り合いへ。そんな中でもユーモア溢れるやり取り。何より、エリザベス・スワンとウィル・ターナーの結婚の儀を取り計らうのが、“アイツ”だというのが粋です。

 ジョニー・デップは相変わらずステキですが、今回はバルボッサ演じるジェフリー・ラッシュの好き放題なはしゃぎっぷりがよかったです。とても『シャイン』のデイヴィッド・ヘルフゴットを演じた人と同人物だとは思えません。この二人のやり取りが最高。

 これで完結なわけですが、実際に完結したのは実はエリザベスとウィルの物語だけで、ジャック・スパロウの(バルボッサ以下、海賊の)物語は全く終わっていない。再び銀幕上に現われても不思議ではないし、どこかそれを期待しています。
 しかし、(クソ長い)エンドロールの後に、ちょっとした後日談があります。あれを見たら、これで終わりでいいんじゃないかな、とも思いました。

 なかなか楽しい“アトラクション”でした。

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