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2007-01-25

裏切りとモラルとロック

 間をおかず更新ですよ! すぐ途絶えそうですが。

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 『ディパーテッド』を見に行きました。監督はマーティン・スコセッシ、出演はレオナルド・ディカプリオ、マット・ディモン、ジャックニコルソン。

 警察に侵入したマフィアと、マフィアに侵入した警察官。裏切りと信頼の物語。

 韓国大ヒット映画『インファナル・アフェア』のリメイクです。私は原作を見ていないので、どう違うかはわかりません。原作ファンがどう反応するのか気になりますが、聞いた話では、ほぼ細部まで忠実にリメイクされているそうです。それでもなおスコセッシ節になっているのが凄い、とも。確かにスコセッシ映画でした。が……。

 「裏切りの連続」と「モラルの崩壊」を描かれた作品であり、エンディングからは道徳的なメッセージを受け取る事ができます。少々喰い足りない部分はありましたが、物語はスリリングだし、音楽もいい。役者陣もよかったです。
 ディカプリオはいい役者になってきましたね。「レオ様」と言われていた頃が懐かしいです。……今も言われているんでしょうか?
 ジャック・ニコルソンの、枯れているのに“色気”のあるマフィアのボスもステキです。
 マット・ディモンはあまり好きになれないのですが、まぁいい演技だったと思います。
 “ネズミ”同士の交錯をもう少し深くして欲しかったです。スコセッシ作品の中でベストとは言わないし、上位にも入らないかもしれないけど、十分面白い映画ではありました。

 しかし―これは『SPA!』で中原昌也氏が書いていた事と同じですが―《何かが決定的に違う》のです。

 無いのか、多過ぎるのか、とにかく《何かが決定的に違う》。
 『ギャング・オブ・ニューヨーク』以降のスコセッシの映画は精彩を欠いていた、と私は思います。考えればディカプリオと組んでからですね。
 それに比べれば、スコセッシ“らしい”作品です。だからこそ、その「決定的な違い」が顕著に現れ、正直なところ、ほんの少しがっくりしてしまいました。次作は「小規模のクルーで、インディペンデントに撮ろうと思う」そうです。何でも遠藤周作の『沈黙』の映画化らしいので、これはちょっと見たい。
 作品の内容どうのよりも、何より、それを痛烈に感じました。
 今が「停滞」であり、この作品でさらに“先”に行ってくれる事を期待したいです。

 そんな中、最も興奮したのは音楽です。使い方が秀逸。

 オープニング、ジャック・ニコルソン演じるマフィアのボスの独白シーン、The Rolling Stones“GIMME SHELTER”が被さる。
 クライマックスに向かうシーン、Dropkick Murphys“I'm Shipping Up To Boston”が鳴り響く。

 どれも、驚くほどカッコ良過ぎです。

 ボブ・ディランやブルースのドキュメンタリー映画を撮っているのに、ここで現役パンクを使いますかね。まさかスコセッシの作品で音楽、しかもロックの興奮を味わう事があるとは。脱帽です。

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2007-01-23

イカとクジラと猫

 相変わらず誰も書かないブログですね。いや、私も久し振りなんですが。映画は何本か見ていたのですが、書く暇がありませんでした。年末年始の休みが進行に響いて……ようやく一息ついたので書きます。だだだと、書いていけたらいいなぁ(もはや願望)。

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 見に行ったのは『イカとクジラ』です。主演はジェフ・ダニエルズ、ローラ・リニー、ジェス・アイゼンバーグ、オーウェン・クライン。監督はノア・バウムバック。
 この不思議なタイトルは、内容と関係ないわけでもなく、何かの比喩になっているわけでもありません。そのまま「イカ」と「クジラ」なのだから面白いです。

(ネタバレありますので、ご注意を)

 舞台は1986年のニューヨーク。父、母共に作家の両親を持つ兄弟が住んでいた。ある時、父と母は離婚を決意する。父は家を出て近所に引っ越すのだが、子供達はその二つの親の家を行ったり来たりする事になる。

 と、簡単に言えば崩壊している家族の話です。それにしてはへんてこりんな状況ですが。

 そんな変な状況の中で、兄が放った「僕達は行き来するとして……猫は?」というセリフが、現実離れをしていながら、妙にリアルで笑えます。それに対して両親も「くそ、忘れていた!」と本気で悩むし。ちなみに、この話は監督の体験が基になっている自伝的映画らしく、監督の場合は両親が映画評論家だったそうです。

 父・バーナードは、かつては脚光を浴びていたものの、今はスランプに陥っています。そんな中でも「本と映画に興味のない人間は俗物だ」と言い切るような男が彼です。
 一方、母・ジョーンは新人作家として『ニューヨーカー』に作品が掲載されるなど、脚光を浴びつつありますが、浮気性で恋愛を繰り返しています。
 兄・ウォルトは思春期ならではの恋の問題や性的衝動に悩まされ、弟・フランクも性的衝動をどう解消すればいいのかわからずとんでもない行動を起こしてしまいます。

 みんな問題だらけ。

 ユーモアを交えながら(ちょっとブラックです)、「家族」とは何なのかを一つの滑稽な家族を描く事によって表現しています。
 実は真の俗物だった父、相変わらず恋愛をし続ける母、何もかもがうまくいかない兄、戸惑う弟。
 皆、何かしらの問題を抱え、何とかしたいと思うんだけどうまく行かず、思わぬ方向に事態は進展していきます。哀しみに明け暮れる事も、考える事も、行動する事もなく。

 そんな中から、一緒に家を行き来していた猫はスルッと逃げ出す。まるで、「俺は関係ないよ」と言わんばかりに。あの猫はどこへ行ってしまったんでしょう。

 「イカ」と「クジラ」はウォルトのトラウマです。彼は小さかった頃、ニューヨークの自然博物館で格闘する「イカ」と「クジラ」が怖くて泣き出してしまった。それは、その姿が両親の姿とダブったからでしょう。それを認識した時、ウォルトは初めて一人の人間として、自分の家族を見つめる事ができるのです。

 そこで映画は終わります。とても唐突な終わり方です。
 この後、あの家族はどうなっていくのか。修復するのか。再生するのか。破壊するのか。
 見ての通り、どこにでもある家族、とは言えません。しかし、何故かシンパシーを感じます。本当の物語はいつも映画が終わった後に始まる。この家族が、どういう形であれ幸せになってくれる事を、心より願います。

 ウォルトは学園祭でギターの弾き語りをします。自作の曲と言っていましたが、実はピンク・フロイドの“Hey you”という曲でした。その曲の歌詞は、とても意味深でした。歌詞の引用で、この感想は終わろうと思います。

《Hey you, would you help me to carry the stone?
 Open your heart, I'm coming home.
 But it was only fantasy.
 The wall was too high,as you can see》
(ねえ、君、僕が石を運ぶのを手伝ってくれるのかい?
 心の中に何があるか話してよ、家に帰る予定だからさ
 でも、それって幻想だったね
 君も知っているように、あんまりにも壁が高すぎたからさ)

《Hey you,don't tell me there's no hope at all
 Together we stand, divided we fall》
(ねえ、君、もう何の望みもないなんて言わないでおくれ
 一緒にいれば頑張れるけど、分かれてしまったらおしまいだよ)

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2007-01-10

明けてました。

 明けてました、おめでとうございます。このブログは相変わらずまったりと更新していきます。

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 新年最初の映画は『007/カジノ・ロワイヤル』でした。
 元旦に見に行ったのですが、空いているからと思ったら、席が9割埋まるくらいの盛況ぶり。街自体は空いていたんだけど、考える事はみな一緒なんですね。よほどテレビがつまらないのかな。

 出演はダニエル・クレイグ、エヴァ・グリーン。初の金髪ジェームズ・ボンドです。何でも欧米では先代のピアース・ブロスナンの人気が高かったせいか、彼が次のポンドだと発表されたら反発がひどく、ボイコット運動、アンチサイトも出来てしまったと聞きました。

 私も、彼が次のボンドだと聞いた時は「貧弱なボンドになってしまうなぁ」と思っていました。しかし、彼の出演作『レイヤー・ケーキ』を見て考えを改めました。これは期待できる、と。
 実際、彼のボンドデビュー作である今作が公開されたら好評で、シリーズ最高傑作とも言われています。映画評論家や「007」の原作愛読者からはダニエル・クレイグが演じるジェームズ・ボンドは最も原作に近いと評価している人もいるとか。見てから判断しないといけませんねぇ。

 物語は古典的です。(真の意味で)「007」が生まれるまでの話、と聞けば大体展開が想像できて、その通り。それは別に問題ではありません。「007」シリーズは、サスペンスや推理やどんでん返しよりも(これも期待したいところですが)、ジェームズ・ボンドが如何に事件を解決するか、が一番の見所だと思っています。そういう意味で、今作の演出はスタイリッシュ(冒頭のアニメーションが秀逸!)、セリフは粋、とかなり楽しめました。

 何より、前述のダニエル・クレイグがいいんです。紳士でワイルド、クールで皮肉屋、知的でタフガイ(死語ですかね?)、それでいて非常に人間くさいジェームズ・ボンドとなっています。
 多分、私より上の世代(私、26歳です)は未だに最高のジェームズ・ボンドはショーン・コネリーだと思っている人が多いでしょう。実際、私の父親もそう言っておりました。
 私の世代では、ショーン・コネリーは既にジジイという認識なので、若い姿を見ると、生々しくて胸焼けしそうになってしまいます。まぁこれも失礼な話ですが。個人的には先代のピアーズ・ブロスナンは紳士過ぎて物足りなかったので、ダニエル・クレイグのボンドこそ“俺達の「007」”のような気がします。

 結末は少々ビターだったけど、それも予想できたので後味は悪くないです。元旦にふさわしい映画でした。原作も読んだのですが、深みは原作の方がありましたが、ル・シッフル(敵)とのカード対決は映画の方がスリリングでした。読み比べるのも一興かと思います。

 最後になりましたが、今年も『WiLL』(とこのブログ)を宜しくお願いいたします。

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