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2006-11-06

勝ったのは誰だ?

 誰か書けよ! と思うわけですが、まぁいいです。
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  『父親たちの星条旗』を見ました。 硫黄島二部作の第一部でアメリカ側の視点。第二部、日本側の視点『硫黄島からの手紙』は12月公開です。客席にはお年寄りが多かった気がします。

 監督はクリント・イーストウッド。ハリウッドが硫黄島の映画を作る、と聞いた時は『パールハーバー』みたいになるんじゃないかと不安になりましたが、監督がイーストウッドと聞いただけで安心しました。ダーティー・ハリーもいつの間にか「ハリウッドの良心」です。

 硫黄島の擂鉢山に星条旗の旗を立てる時に撮影された一枚の写真にまつわる物語。旗を立てた、とされた兵士の生き残り三人が帰国し、英雄扱いされ戦時国債集めに使われてしまう。硫黄島の戦闘そのものではなく、兵士達はは何のために戦い、死に、生き残ったのか。戦場における英雄とは何なのか。

 戦争において、もっとも辛く哀しい想いをしたのは、間違いなくたくさんの“名も無い”死んでいった兵士達です。しかし生き残って、しかも英雄になってしまった“名を得た”兵士達にも、深い傷跡を残したのです。

 正体不明の敵(日本兵)と戦う怯え、そこから発生する狂気。たまたま写真に写り、生き残っただけなのにイベントやパーティが夜ごと日ごとに繰り返され、拍手やスポットライトを浴びる、国民・国家の狂気。
 物語は、硫黄島の戦闘シーン、帰国後の国債キャンペーンツアー、さらに現在の関係者へのインタビューという三つの時系列を織り交ざっていきます。少々複雑で、しかも兵士の顔が全員坊主で、顔も泥だらけなので最初の方では誰が誰だかわからなくなってしまいました。

「真の英雄は私たちではなく、戦場で死んでいったたくさんの仲間達です」

 生き残った兵士の一人は民衆にそう語ります。それは、間違いなく本心なんでしょうが、どこか空虚なフレーズに聞こえてしまうのは何故なんでしょう。あまりに我々がすれてしまったからなんでしょうか。

 戦場の真実とは、生き残った者の中にあるのか、死んでいった者の中にあるのか。そもそも真実なんてものがあるのか。

 戦闘シーンはなかなかの迫力でした。特に島上陸シーンは、圧巻の迫力。摺鉢山の山頂から海岸を俯瞰すると、凄まじいばかりの数を誇るアメリカ兵団。これを見た日本人は、生き残る事なんて考えなかった、考えられなかったんでしょう。
 それはそれで狂っています。 そう、戦争は狂気で、異常な空間なのです。しかし、戦争に追い込まれてしまう状況というのは確かにあります。だからこそ軍事力を持つという議論が巻き起こっているのです。結論はまだ出ていませんが……。

 あるシーンで、兵士の前に旗を立てる兵士の図を模ったケーキが出される。それにかけるのはストロベリーソース。真っ赤な液体が流れる英雄達。あれは本当にあった事なんでしょうか。本当だとしたら、哀しくなるほど無神経です。それはケーキに限った事ではなく、英雄達の像を作った人々もそうでしょう。だけど、作らざるを得ない心理状態だったのも事実。それが更に哀しさを加速させる。

 狂乱の果てに、彼ら英雄達はどう過ごしたか。その後の人生には胸が詰まりました。
 残ったのは虚しさだけ。
 「日本兵」という言葉も、日本兵の姿も殆ど出てこない。だからこそ、アメリカ兵達は何と戦ったのかはっきりしない。
 銃口を向けている相手は誰なんだ。
 戦争に勝ったのは“誰”なんだ。
 私には、まだ、その答えはわかりません。

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硫黄島 アーリントン国立墓地 彫像 画像 これまた話題のキーワードですね!タイトルを見ると硫黄島にアーリントン国立墓地があるようにも見えますね硫黄島は太平洋です。アーリントン国立墓地はアメリカにあります。「硫黄島からの手紙」「父親達の星条旗」クリントイーストウッド監督の日本とアメリカ2つの立場&視点から描いたという2つの映画の公開が近いので検索されているキーワードですね太平洋戦争の激戦地、硫黄... [続きを読む]

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