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2006-05-24

おやすみなさい、そして幸運を。

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 何度もこの書き出しで申し訳ありませんが、お久し振りです。
 うだうだ書くのはやめて、早速映画の感想を。

 冷静な、そして公平な話し合いができない相手との論争ほど虚しいものはありません。しかも、相手が上院議員という権力者だったとしたら、さらにやる気は起きないでしょう。しかし、この男は立ち向かった。

 『グッドナイト&グッドラック』
 

1953年、アメリカ。米ソ冷戦下、マッカーシー上院議員が率いる委員会は、国内の共産主義者を根絶やしにしようと躍起になっていた。彼らは政府から軍部、ハリウッドまで、根拠の有無に関わらず、共産主義者とみなした者を次々に告発。数千人が地位や職を追われ、自らのために密告する者もいた。
 マスコミも例外ではなく、報復を恐れるために何も報道しない。そんな中、大手テレビ局CBSの人気キャスター、エド・マローとプロデューサーのフレッド・フレンドリーは、マッカーシーの虚偽と策謀の事実を、看板番組『シー・イット・ナウ』で報じる事に踏み切った。

 長い物語紹介ですみません。しかし、マッカーシーイズムについて知らないと、この映画はさっぱりわかりません。事実、映画が始まる前に、日本語で説明テロップが流れました。あれはおそらく配給会社の配慮でしょう。多くの日本人にはいきなりマッカーシーの話をされても、チンプンカンプンじゃないかと。

 監督は、今や「ハリウッドの兄貴」ことジョージ・クルーニー。監督二作目です。いい監督になりつつあります。
 過剰な演出が多いハリウッド映画の中で、この映画は逆にシンプルに描かれています。まず舞台が、ほとんどCBS社内と番組放送シーン。
 
 鋭く動くスタッフの目線。
 一分一秒を伝えるプロデューサー。
 緊張を決して外には出さずに番組を進行していくマロー。
 しかし画面には映らない足元は震えていた。

 さらに、マッカーシーの映像は当時流れていた本人の映像です。それが更に緊迫感を出しています。
 セリフは厳選された言葉を使い、無駄がない。物語は決してドラマティックにも、エンターテインメントにもならずフラットに進んでいきます。
 モノクロの画面は美しくスタイリッシュ。局内での生演奏として流れる音楽もステキ。ひと言でいえば「粋」です。オシャレというより「粋」。
 何より際立つのが煙草と煙。
 マローはヘビースモーカーで四六時中煙草を吸っていました。番組内ですら吸い続けているのです。まぁ『シー・イット・ナウ』が煙草会社の提供している番組だから、というのも関係しているでしょうが。とはいえ、「煙草は害悪である」という考えが蔓延しているアメリカで、よくいまこういう映画を作ったものです。
 これがまたもの凄く格好いい。(ちなみにマローは肺がんで、亡くなりました)

 タイトルの「グッドナイト&グッドラック」は、マローが番組最後にいつも言う挨拶です。「グッドナイト」、そして少し視線をずらして「グッドラック」。かっこいーーーんですよ、これが。

 この映画はジャーナリズムについて、そしてテレビ報道について描かれています。ジャーナリストが考えるべきこと、ジャーナリズムの危険性。
「公平な報道などない」
 とよく言われます。映画内でマローも口にします。
 では、一体報道とは何なのでしょう? 事実を伝える、客観的に伝える、公平に伝える、正義を伝える……様々な考えがあり、そのどれもが正しいようで、間違っている気もします。マローたちが伝えなければならないと思ったこと(マッカッシーイズム)は、確かに間違ってはいなかった。しかし、その失脚したマッカーシーは近年再評価の声が上がっているそうです。
 
 彼らは文字通り「世界を変えた」放送をしました。世界を変えることがどれだけ難しいか。いや、それよりもっと単純に、「報道」という行為、「伝える」という行為、がどれだけ難しく重要であるのかが、この映画を通じ「伝わって」きました。

 映画は、報道番組協会で行われたマローのスピーチで幕を上げ、そして幕を下げます。全文引用したいくらいの名スピーチですが、それは映画のクライマックスでもあるのでやめておきます(ちなみに、パンフレットに全文掲載されてしまっているので、パンフレットは見終わった後に購入なさるのがいいと思います)。

 煙を吐きながら壇上に立つマロー。
 テレビ、放送業界の現状を痛烈に批判、未来を憂い、それでもテレビの可能性を語ったマロー。
 そして、いつもの挨拶で結ばれた。

「グッドナイト、そしてグッドラック」

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 映画の本質とは関係ないが、1950年代のテレビキャスターは堂々とタバコをふかしながら、カメラに向かってしゃべっていたんだ、とちょっぴりびっくりした「グッドナイト&グッドラック」(ジョージ・クルーニー監督)。今では考えられないほど、放送局は紫煙いっぱいの....... [続きを読む]

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