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2006-02-20

戦争なんてクソ食らえ。

 ついに他の編集部員が書き始め、ほっと一安心したら再びピタッと止まってしまった。一気に更新せずに分けてやってほしかったです。
 といいつつ、私も一回だけしか更新しておりません。<毎週一本映画を見る>と言っておいてこの体たらく。申し訳ありません。言い訳をさせていただけると、風邪をひいてしまい、映画を見にいけなかったのです。といって、回復して見に行ったのも結構前なので、結局は怠慢です。すみません。

 気を取り直して映画感想を。
 今回は『ジャーヘッド』です。

 『N.Y.タイムズ』が戦争文学の最高峰と絶賛した海兵隊員のベストセラー回顧録を映画化したものです。18歳の少年が海軍に入隊し、湾岸戦争下のイラクに派遣されるが、戦いはなく演習と待機、そして暇つぶし……。

 監督は『アメリカン・ビューティー』でオスカーを獲得したサム・メンデス。出演はジェイク・ギレンホール、ピーター・サースガード、ルーカス・ブラック、クリス・クーパー、ジェイミー・フォックスなど、派手さはないけど渋くて良いキャストです。
 タイトルの「ジャーヘッド」とは、ポットのように刈り上げた頭=頭が空っぽの海兵隊員という意味。海兵隊員の目から見た戦争が描かれています。

 戦争映画にはよく「この映画にはリアルな戦争が描かれている」「戦争の真実の姿がここにある」といった謳い文句が使われます。
 実際に戦争に行ったことはないので、リアルなのか真実なのかは判断できませんが、戦争映画の場合、いつも“戦争”そのものとは違う要素で腑に落ちないことがあります。
 それは何が善で何が悪か、です。
 ことアメリカは戦争を描く時は、自分たちをヒーロー化させるか、内部告発的に糾弾するかです。それが、何だかさめてしまうというかそんな気持ちにさせるのです。

 余談ですが、私は『ブラックホーク・ダウン』を見た時、激怒しました。
 これは1993年のソマリアの内戦に軍事介入したアメリカ軍による強襲作戦が民兵の攻撃によるヘリ墜落によって、泥沼の悪夢の市街戦に発展した時の話を映画化したものです。
 監督のリドリー・スコットはインタビューで「私は中立の立場でこの映画を作った」と言いました。
 見てみると、ややアメリカ寄りの視点ですが、これは仕方ないと思います。本当の中立的な視点というのは不可能だからです。それなりに中立で、迫力もありなかなかの良作だと思いました。
 ところが映画本編が終わりスタッフロールの流れる前、あるものが画面に映りました。
 それはその戦いにより死んでいったアメリカ兵の氏名リストでした。
 「何だこれは?」と私は思いました。そんな風に死んだ兵士を美化するような演出は、まるでアメリカが善でソマリアが悪といった様なものじゃないか。ソマリアの人々が何人死んだと思っているんだ。
 この強襲作戦により、内戦にどういう影響を与えたのか。この作戦がなかったらもっと泥沼になっていたのか。それはわかりませんし、この映画には関係ありません。
 リドリー・スコットが「中立」だと言うのなら、亡くなったソマリアの人々の名前も書くべきだったのではないか。表現者としておかしいじゃないか。
 そしてそのことについて、映画評論家は誰一人言及していない。それで更に怒りが倍増してしまい、リドリー・スコットに対し悲しい気持を持ちました。好きな監督だったのに……と。
 
 余談が長くなりました。
 要は善悪の要素が入ると気持が萎えるということです。『地獄の黙示録』は「戦争中に一人の男が一人の男を殺しに行く」という個人映画なので、面白く見ました。
 さて、『ジャーヘッド』はどうだったか。
 先に書いた通り、海兵隊員の目から見た戦争の姿です。そこには善も悪も、戦争の正体も何もありません。あるのは“戦争”そのものだけでした。
 奇しくも映画のワンシーンにこういうシーンがあります。ある兵士が「この戦争はアメリカが云々」というと、上官が「そんなことは俺たちには関係ない。俺たちはイラクにいるんだ」と言います(そのままではないですがニュアンスはこうです)。
 兵士にとって戦争というのは、敵に勝つことであり敵を殺すことに他ならないのです。戦争の原因も、何が善で何が悪かも関係ないのです。よく言われる“バーチャル感覚”“ゲーム感覚”なんてものとは程遠い、「ただ敵を殺す」ことだけを待ち、考え、実行する、異常過ぎる世界。
 それこそが戦争の正体なのかもしれません。そして、そんな異常な世界を作っていいのかどうかという是非を問うなら、間違いなく非です。
 理由原因経過結果、その時その時でいろいろあると思います。しかし、戦争という現象に対しては、ただ一言、心より「戦争反対」。そう思った映画でした。

 感動映画ではありません。アクション映画ではありません。テーマもメッセージも希薄です。しかし、とても良い作品でした。

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